インタビュー:ビクトリノックスな人々 飛田 和緒
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愛用のキッチンナイフ

お気に入りのナイフがあるだけで、料理は楽しい。
豊かな食材に囲まれて暮らす。
 最近、相模湾を見下ろす高台に越してきました。東京に生まれ育った私は、いつかは海の見えるところで暮らしてみたいと思っていましたので、長女の誕生を機に実行に移しました。一番変わったのは食材を手に入れる環境でしょうか。これまでは一度にいろいろな食材が揃うスーパーマーケットに通ってきましたが、今はお肉はお肉屋さん、魚は魚屋さんや漁師さん、野菜や玉子は近所の直売所から買ってきます。方々に少しずつ買い回りしなければならない不便さは付きまといますが、旬のものを手軽に入手できるよさは何ものにも替えられません。魚は一匹丸ごと豪快に並んでいるのを買ってきて自分で捌く。安く売っている雑魚は、開いてベランダで一夜干しにするとか。骨まで食べるという習慣も身につきますね。野菜はその時期にしか取れない旬のもの、出盛りのものを安く入手でき、余ったものを保存食にするという豊かさがあります。昔ながらの食生活を楽しめる環境は、とても気に入っています。
谷村志穂さんとの出会いから。
 私の家族は、全員、食べることが大好きで、度を越した食いしん坊でしたね。特に明治生まれの祖母は、食卓でのマナーや生活態度とか、しつけには口うるさい人でしたが、初物や季節の味わいをすごく大切にする人で、その影響を少なからず私も受けています。亡くなってしまうと、これもあれも聞いておきたかったと、とても残念な思いです。料理好きの家族に囲まれてきたという幸運以外に、料理学校へ通ったわけでもなく、料理家のアシスタントをやった経験があるわけでもありませんでした。作家デビューされる前の谷村志穂さんに出会い、お手伝いしたある雑誌の仕事が偶然にも編集者の目にとまり、料理本を作るきっかけとなりました。その後、自然にこの道に進むことができたのは、そういう家族に囲まれて育ったおかげだと思います。
トマト・ベジタブルナイフが大のお気に入りに。
 ずいぶん前になりますが、野外で使える、先のとがっていない、でも、しっかりしたナイフを探していたら、このトマト・ベジタブルナイフに出会いました。都内のデパートに無造作に陳列されているものを見つけて、ビクトリノックス製とは知らずに買い求めました。コンパクトで、握りの具合もちょうどいい。それで、使ってみたら、本当によく切れて大のお気に入りになりました。果物の皮をむいたり、バゲットを切ったりするのも便利で、家の中だけじゃなく、ハイキングに出かけたりするとき、バスケットに必ず入れておきます。私も、谷村志穂さんもスーベニアというポケットナイフを愛用していましたが、キッチンナイフというのは初めてでした。ビクトリノックス製では、もう少し大きなクックスナイフを、牛刀がわりに使っています。
「よく切れる包丁持っていますか?」
 ヨーロッパの人を見て驚くのですが、小さなナイフを手におさめて、トマトを切ったりジャガイモをサイの目に切ったりしますよね。手先がナイフと一体となって違和感がありません。あれはまな板を使わない独特の文化。道具と使い手の連帯が生まれるには、ナイフの握りと手のなじみがとても重要なんです。ビクトリノックスのキッチンナイフの使いよさは、そこから来ているのではないかと思います。 仕事をしているなかでみなさんによく問いかけるのは「よく切れる包丁持っていますか?」ということです。良い道具を持っていれば、必ず上手になります。私も最初から上手に細く切れたわけでなく、薄く皮をむくことができたわけではありません。毎日やっているとだんだんうまくなっていくものです。良い道具の条件は「よく切れること」「手入れができる道具であること」ですね。包丁はどれも最初はよく切れるものです。使い込んでいくうちに、切れやんでくるのですが、手入れによって切れ味を維持できて、しかも使い込むうちに愛着がわいてくる。そういうものがいい道具だと思います。
握りが持ちやすく、切れ味がいい

たくさん獲れた季節の恵みは保存食に
これがおばあちゃんの知恵
だれかのために作るって素敵なこと!
「よく切れる包丁持っていますか?」
 もともと作るのが好きなのじゃなくて、食べるのが好きなんですよ。一手間かけておいしくなるなら、手間をかけたくなります。本当にやりたくないのに、作らなければいけないからと思って作った料理はどこかおいしく感じない。そういう気分のときは、いさぎよくやめて外食したほうがいいと思うほどです。私は外食を否定するつもりはさらさらなく、ファーストフードだって時にはいいと思うのです。でも、家族に囲まれて、おいしい食事を作って、それをいただく喜びは何ものにも替えがたいものです。だれかのために作るということでないと、料理は楽しくない。家族が一人増えて、この子のために料理を作る喜びは、また格別です。ただ毎日のことなので、ちょっとした刺激がないと飽きてきますよね。好きなナイフがあるとか、旬の材料があるといったことは大切な要素です。ナイフは料理の基本。切れない、使いにくいじゃ、やる気が出ないです。いつも研いでよく切れる状態にしています。

飛田和緒(ひだ・かずを)
1964年、東京生まれ。バレリーナからOL、ライターをへて、現在に至る。谷村志穂氏との共著『お買物日記』(集英社文庫)、『晴れた日にはキッチンで』(幻冬舎)、『おいしいごはんは、器とはじまる』(講談社)、『飛田和緒の台所の味』(東京書籍)など著書多数。
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