インタビュー:ビクトリノックスな人々 NPO法人アニミ理事長 服部一弘
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使う人の顔が見える。それがいい道具の条件です。

キャンプには欠かせない
バイク屋で知り合った先輩のこと。
 ぼくが最初にビクトリノックスに出会ったのは18歳のとき。就職した先のオートバイ屋さんに年上の人がアルバイトで入ってきた。その人が山好きで、一緒に行こうと誘われた。そこで必要な装備を買いにショップに出かけたのですが、その装備の中の一つがビクトリノックスでした。ついこの前まで使っていたんですが、本栖湖にキャンプに行ったとき、みんな同じようなビクトリノックスを使っていて、行方不明になってしまった。それで新たにビクトリノックスを買いに行ったのですが、やはり同じチャンプを選んでしまいました。
いつもビクトリノックスが一緒だった。
 1986年、北米大陸一周ツーリングにメカニックとして参加したときも、チャンプを携えていきました。カナダ東部で交通事故に遭ったとき、ズボンのポケットに入れていたビクトリノックスの痕跡が、いまでも太ももに残っているくらいです。2000年に車いすを積み込んだトライク(三輪バイク)に乗り、単独で北米大陸の旅をなしとげたときも、ビクトリノックスが一緒でした。旅でよく使うのはナイフ、ハサミ、缶切り、ドライバー。のこぎりも薪の焚き付けやお箸を作ったりするのに使います。ナイフはペラペラになるまで研いで使っていましたね。身体障がい者の人たちを誘って毎年ヨセミテにキャンプに出かけるのですが、まあ、寝袋とビクトリノックスがあればなんとかなる。そういう安心感がビクトリノックスにはありますね。必要なものがぜんぶ揃っている。なおかつ、ひとつひとつのツールの造りがしっかりしている。それが気に入っています。
北米大陸をトライクで旅する

車いすのポケットにも
ビクトリノックス

滑るような丸みが、優しい。
 いま、身体障がい者のための道具づくりのアドバイザリースタッフとしてノーマライゼーションの仕事をしていますが、いい道具とは道具の向こうに人の顔が見えるということでしょうか。逆にいうと、見た目を優先させない。やはり大切なことは使う人のことを考えて造られているということ。このチャンプだって、左右で太さが微妙に違うんです。暗闇でまさぐるときも、取り出しやすいし、この独特の滑るような丸みが、優しい。ポケットに入れてもゴツゴツしない。なんともいえないくらい心地いいのです。
障がい者が障がい者をサポート。
 2003年、福祉増進・社会教育の事業を展開するためNPO法人「animi」(アニミ)を設立しました。ぼく自身いろいろな人たちのおかげでここまでやってきましたので、今度はぼくができることでお返ししたいと思ったからです。バリアフリー研修やキャンプなど、いろいろな活動を行っていますが、いちばんうれしいのは仲間が就職できたときですね。いまの日本はだいぶ門戸が広がったとはいえ、まだまだ障がい者にとって就職は夢なんです。
障がい者にとって就職は、夢の夢。
 いま、障がいをもっている人の割合は確実に増えてきています。現状では、大きくとらえて1割くらいでしょうか。これから高齢化社会を迎え、その割合は人口の4分の1に達しようとしています。75歳以上の後期高齢者の割合はそのうちの75%で、白内障で目がかすむとか、耳が遠くなる、足腰が弱って車いす生活を余儀なくされる人々です。このような人々を含めると、世の中の3分の1くらいは障がい者になってしまうんですね。健常者との橋渡しがますます必要になる時代を迎えようとしています。障がい者の中には社会生活の経験が乏しいために、ある種の常識が不足していたり、上手にコミュニケーションできない人々がいます。そこでトレーニングして社会で自律できるようにお手伝いしているんです。苦労も多いですが、その苦労が報われて就職できたというニュースを耳にしたときは、本人以上にうれしいものです。
カブで世界一周を!
 つい先日、サイドカーをつけて乗れる原付バイクの免許を取りました。サイドカーに車いすが載せられるので、たいへん便利です。それまではいろいろな規制があったのですが、カンタンな適正相談とペーパーテストで車いすの人でも遠くへ移動できるように働きかけました。ぼくの夢は、サイドカー付きカブで世界一周することです。なぜカブかというと、世界どこに行っても部品があるんです。故障してもなんとかなる自信がある。それがカブの最大の良さです。

車いすで乗り入れ運転席に移れるサイドカー付バイク


服部一弘(はっとり・かずひろ)
通称、たろ。1963年、鎌倉生まれ。1981年高校卒業後、フジワラホンダに入社。1985年退職後にバイク修理屋「WONDERKIDS」を設立。1986年、北米大陸一周ツーリングで事故に遭う。2000年、TARO'S PROJECTを立ち上げ、再び北米大陸一周の旅へ。帰国後、NPO法人「animi」(アニミ)を設立。現在、市民セクターよこはま理事長、Paraphoto理事、ユニバーサルイベント協会理事、たすけあい ゆい評議委員、日本介助犬協会評議委員など。http://www.animi.jp/
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