インタビュー:ビクトリノックスな人々 リポーター・作家 竹内 海南江
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私にとって、キッチン用品と道具箱みたいなもの。

かれこれ15年の付き合い
帰ってくる所があるから、旅は楽しめる!
 かなりヤンチャで、元気いっぱいの子ども時代でした。とにかく明るくて、にぎやか。考える前に、なんでも体当たりでやってしまう野生児タイプ。でも、芸能界に入って、しかも世界を飛び回るレポーターになるなんて、あの頃は両親も友だちも、私でさえも想像していませんでしたね。
 この世界に入るキッカケも今考えれば、ラッキーの一言です。
番組のディレクターが、「レポーターやってみない?」って声をかけてくださって。仕事とはいえ、いろいろな所に行けるなんて、こんなに楽しいことはないと思いますよね。
 まだその頃は、番組が始まって2年目位でしたから、私自身もミステリーハンターという仕事をはっきりとイメージできる状態ではなかったので、できるかできないかは別にして「やってみよう」と思いました。転がり込んできたチャンスという感じです。
 海外ロケは移動時間を除いて、基本的に中10日間。だいたい14日〜18日の行程です。国内だと中5日くらいでしょうか。私を含めて5人のスタッフで、世界を飛び回っています。今まで行った国は、どこもその国ならではの良さがあって、面白かったですね。よく一番楽しかった国は?…って聞かれますけれど、答えられないですよ。辺境といわれる国にも行ったけれど、物のない国には物のない国なりの、水のない国には水のない国なりの味わいがあるんです。段々と旅慣れはするけれど、旅自体に飽きることはありません。たとえ同じ国を三度訪れたとしても、毎回テーマが違いますから、いつも新鮮な出会いや発見があるんですよね。
 訪れる国の文化や習慣に注意して、その土地で生まれ生活している人たちの喜びや大変さを想像しながら、番組を見ている方に伝わるようにレポートしようと心がけています。そして、いつも思うのは、必ず帰ってくるという前提があるから、旅をし続けることができるんじゃないかって。帰る場所があるからこそ、旅を楽しむことができるんだといつも思っています。
旅するときはビクトリノックスがいっしょ
いつもいっしょ、ビクトリノックスと梅干。
 海外旅行に必ずもって行くものが二つだけあります。それは、ビクトリノックスと梅干です。もうこれはお守りみたいなもの。暑い国、寒い国、旅の長さなどによってスーツケースの中身は変わりますが、この二つだけは必ず一緒です。ビクトリノックスとの出会いは、この仕事を始めてからだからかれこれ15年の付き合いですね。とにかく周りのスタッフ全員が持っていて、しかも大事なオモチャみたいに、自分のを自慢するんですよ。飛び道具みたいでカッコイイなあ、一個で全部済むから便利だなあ、羨ましいなあ、と思って。当時はすっごく高級品だったから、海外に行ったときに早速一つ購入しました。今のは二代目なんですが、初代のビクトリノックスをパリのカフェで買った時、ちょっとした事件があったんです。ビクトリノックスを薦めてくれたカフェのウエイターさんが、「ほら、見て。便利だよ!」って親切にすべてのツールを出して見せてくれたんですが、順番を間違えたのか、いきなりピシッと指を切っちゃって。びっくりしました。気をつけて使わないといけないですね。
 この初代ビクトリノックスは、特にハサミを集中的に愛用していました。当時私は髪の毛が長かったから枝毛も多くて、時間があれば、ビクトリノックスのハサミで切っていたんです。大きさや切れ具合が、なんともいい塩梅で。そうしたらとうとう使いすぎでバネの部分をこわしちゃった。そして次に、今も愛用している二代目を、パリの文房具屋さんで購入しました。
グランドキャニオンにて
サバイバル用品じゃなく、生活用品という感覚。
 特によく使うのが、せん抜きです。お水にしてもジュースにしても意外と海外はビンのものが多いので、せん抜きは重宝しますね。ワインオープナーもあると便利だし。あとはナイフ。オレンジやりんごの皮を剥くための包丁の代わりであったり、大きなハサミの代わりであったり。国によっては、荷物のタグが頑丈でベタベタして、手では絶対取れないタイプのものがあるんです。
 そんな強力ガムテープやビニールテープ、ロープなどを切るときはナイフやハサミを使います。私にとってはサバイバル用品じゃなく、完全に生活用品ですね。必要最小限のキッチン用品と道具箱みたいなものです。でも、本当のことを言うと、基本的に自分のビクトリノックスは汚したくないので、果物の皮を剥くときや汚れそうな時は、スタッフのを借りちゃっています。大切なものですから、あまり汚したくなくて。これからもずっと一緒に旅をしていきたいですね。
世界はまだまだ広い、と思う。
 今まで80ヵ国以上を旅してきましたが、世界はまだまだ広くて、私の訪れた国は、その半分にも満たない数です。まだこれだけしか行っていないんだ、という気持ちです。行ってみたい国は山ほどありますね。ただテロやクーデター、内戦などで、どんどん行ける国の数が減ってしまっているのが残念でたまりません。特に行ってみたいのは、アルジェリアとナイジェリア。でも、国際情勢が悪化しているから危険で入国もできません。紛争地帯は歴史的、文化的に豊かなところが多いのでとても興味があります。そういったところが早く安定してくれると、もっと足を伸ばせる場所が増えると思っています。
 この仕事の経験が、これから先どのように広がっていくのか、また将来何をやりたいかは、まだ試行錯誤でわかりませんが、何か面白いことをやっているかもしれません。
 今書いている小説や童話、エッセイ、イラストなどにしても、「やってみる?」と聞かれて、よし挑戦してみよう、という気分でしたから。旅の体験を書くつもりが、いざ書いてみると全然旅とは関係のない不思議な話が始まってしまったり。一事が万事、意外なことから始まって、意外な方向に進んでしまう。だからいつも今目の前にあることを精一杯やることにしているんです。だって、誰でも最初はすべて初めてのことだから、とにかくやってみた後で考えようと。失敗したら、それを次にいかす、それだけのことですからね。

竹内海南江(たけうち・かなえ)
TBS『世界ふしぎ発見!』のメインレポーターとして活躍中。初登場は1987年11月、出演回数は180回以上、すでに80ヵ国以上をレポート。小説『うたかたの月』(幻冬舎)、『アフリカの女』(幻冬舎)のほか、散文写真集『グリオの唄』(ブルースインターアクションズ)も発表。公式ホームページ「かなな共和国」 http://www.kanana.com/
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